東京スキンクリニック

ケミカル・ピール

 当クリニックでは1992 年,日本で初めて,グリコール酸によるケミカルピーリングを本格的に導入しました。院長の岡部夕里先生はケミカルピーリングの権威として,数々の研究発表や講演・講師を行ってきました。1997年に出版された美容皮膚科学の教科書「美容皮膚科プラクティス」でこの項目の執筆を担当している他,1999年10月には,「ケミカルピーリングのこつ〜グリコール酸によるケミカルピール」という医師のためのケミカルピーリングの教科書を著しました。
 1998年5月に日本美容外科学会と同時開催された公開講演では,当院医師ルネ・デュ・クロー先生が「ケミカルピーリング:グリコール酸で素肌美人になる」と題し,一般向けの講演を行いました。以下は,この講演のテキストをまとめたものです。

ケミカルピーリングってなに?
 ケミカルピーリングは今やホットな話題。雑誌やチラシでよく見る言葉だけれど,中身はよく知らないという人がほとんど。
 それでは,まずは、英語の授業から。ケミカルは化学物質。ピールは剥くとか剥がすとかいう意味の動詞で、ピーリングはピールすることです。それで,ケミカルピーリングとは,「化学物質を塗ってその作用で皮膚の表面を剥がすこと」となります。
 イメージとしては,タマネギの汚らしい茶色い皮を剥くと,真っ白でつるつるした表面が出てくるような感じ。でも、人間の顔の方がタマネギよりピールが難しいですね。

どんな薬があるの?
 現在,ケミカルピーリングに使われる主な薬には、フェノール、トリクロロ酢酸、グリコール酸があります。一口にケミカルピーリングといっても、フェノールではかさぶたができてごそっと剥ける深いピールになります。トリクロロ酢酸では茶色く固い皮が剥ける中位のピールとなります。当院で使っているグリコール酸は浅いピールに用いられ、通常がさついて薄皮が剥ける程度です。ピールが深ければ深いほど劇的な効果が出やすいですが、それだけに皮膚の色の変化や傷跡の危険性は大きくなります。当院では、深さの調節が精確に行えるレーザーを部分的な深いピールに使って、顔全体のグリコール酸ピールと組み合わせることで,効果を最大限、危険を最小限にしています。

ケミカルピーリングは新しいの?
 最近日本のマスコミに取り上げられたからといって、ケミカルピーリングが新しい発見というわけではありません。実はケミカルピーリングの始まりは、クレオパトラに遡るのです。
 クレオパトラも現代の女性と同様,肌の手入れに苦労したようです。彼女は発酵させたミルクのお風呂で入浴していたと言われています。発酵乳には乳酸(後でお話するフルーツ酸の一種)が含まれ、ピール効果があります。
 しかし,医学的応用は19世紀終わり,ドイツの皮膚科医ウンナが最初の記述を残しています。彼はウンナ・ペースト(レゾルシンがベースのフェースマスク)を考案しましたが,今では余り使われていません。その後登場してきたのがフェノールです。フェノールを用いた深いピールの手法は、アメリカの形成外科医ベーカーとゴードンにより、1960年代になって確立しました。
 この後もケミカルピーリングは,主にアメリカで発達しました。7〜80年代にはトリクロロ酢酸(TCA)によるケミカルピーリングが盛んに行われました。90年代に入ると,美肌・若返りが目的のグリコール酸ピールが大々的に商品化されました。当院では,アメリカとほぼ並行して,独自の方法でグリコール酸ピールを行ってきました。

Peel while you work!(仕事を休まずにケミカルピーリングをしよう!)
 グリコール酸ピールは,仕事の帰りにできる安全で手軽なピールです。ただし,危険を冒さずに大きな効果を得るには,自分に適した治療プログラムをたてることが大切です。治療プログラムには,ピール治療を受けるための通院回数や間隔,グリコール酸の外用剤による自宅でのケア,必要に応じて他の薬や治療手段との組み合わせも含まれます。顔の場合は通常,1〜2週間の間隔をあけて3回ピールした後外用を始めます。

グリコール酸ってなに?
 それではグリコール酸とはどんな薬でしょう?クレオパトラ愛用の入浴剤である乳酸はフルーツ酸の一つだと言いました。グリコール酸も同じ仲間で,砂糖キビに含まれています。人の皮膚にも微量存在しているので本当に天然の素材です。グリコール酸や乳酸の他にも,リンゴなどの果物やその他の食べ物に含まれている色々なフルーツ酸があります。どれも化学構造に共通する部分があって,似た働きがあり,「アルファ・ヒドロキシ酸」(AHA)とも呼ばれます。その昔フランスの貴婦人が発酵したワインを顔に付けたというのも,ブドウに含まれるフルーツ酸の効果を利用したものでしょう。

グリコール酸の働きは?
 数あるフルーツ酸の中でもグリコール酸は,肌に付けると大きな効果を示すことが知られています。グリコール酸には色々な働きがあります。
 角質層を剥がして,皮膚表面の再生を促し,構造を整えます。
 皮膚の重要な成分であるコラーゲンや弾性線維を増やし,皮膚を厚く,丈夫にします。血管も強くします。
 メラニン色素を減らし,皮膚を白くします。
 毛穴の中の皮脂を取り除き,毛穴を引き締めます。

グリコール酸は何に効くの?
 このように,グリコール酸は皮膚の構造を改善し,全体的な美肌・美白・若返り効果を発揮します。特にニキビ・ニキビ跡,シワ・コジワ,シミや黒ずみ,くすんで張りのない肌,毛穴の目立つ脂性肌などに効きめがあります。グリコール酸の応用範囲は広がる一方で,最近では,赤ら顔や肉割れにも積極的に使用しています。
 グリコール酸ピールでいっぺんにニキビを取ることにより,従来の方法で治せなかったニキビも治るようになったことは,ニキビの治療に大きな進歩をもたらしました。


グリコール酸ピールってどんな処置?
 
洗顔の後,ドクターがまず,除光液でおなじみのアセトンで拭いて,皮脂を取ります。いよいよグリコール酸を塗ります。前もってタイマーをセットして,時間が来たら(顔は通常5分前後),たっぷりの水で薄めて取ります。最後に,洗顔しておしまいです。
 ピリピリ感はあるけれども,痛みと違って十分我慢できます。逆に,痛いのは,ピールが深くなり過ぎる徴候。すぐドクターに言ってください。ピール液を取ればひきます。


グリコール酸ピールをした後は?
 
ピールをしたすぐ後は,赤みと白っぽさが混じったように見えます。その日は,洗顔はよいですが,何も付けたり塗ったりしないこと。スッピンで帰宅することになりますが,一杯やって帰る人に混じれば目立たない程度です。
 次の日から4〜5日は,がさついたり剥けたりします。普通は社会生活に差し支えない程度。化粧をするのならカバーは簡単ですが,化粧ののりは悪くなります。
 アフターケアは必要ありませんが,日焼け止めクリームなどでしっかりと紫外線予防を行ってください。

グリコール酸ピールの危険は?
 
グリコール酸は皮膚表面の細胞と細胞の結合を弱めて剥がれやすくします。もっと深いピールのように,細胞にダメージを与えて,死んだ細胞がかさぶたになって後から取れてくるのではありません。それで,傷跡など後まで残る大きなリスクはなく,安全なピールです。そして,薬の作用を利用しているので,深さの割には大きな効果があります。
 一時的副作用としては,
 赤みが数日続くことがある
 かさぶたが目立つことがあり,ピールが深くなり過ぎた部分は,かさぶたが取れた後も,赤み・黒ずみが暫く残ることがある
 ピールの後無防備で日に当たると,日焼けしたり,シミになったりしやすい
 まれに単純ヘルペスなどの感染が起こって,対処が遅いと広がることがある。
  
注意!
 
最近,いわゆる「ケミカルピーリング」を行っているエステや医療機関やエステが急増していますが,必要なノウハウを持たないためのトラブルも数多く発生しています。
 まず,治療効果を目的としたケミカルピーリングは危険も伴う医療行為であり,エステで受けることはできません。エステに限らず,低濃度のグリコール酸を使ったピーリングは,効果も薄いと言えます。20%未満では外用剤と変わりません。
 また,一般的に,前払い料金制のところには行かない方が無難です。1回分を安く設定してあっても,合計支払い額は高額というのが常です。効果が少ないほど途中で行かなくなるので,結局は「やらずぶったぐり」の商法ということになります。
 最後に,一部の無思慮な人が危険を十分認識せずに過激なピールを行ったための深刻なトラブルも出てきていて,そうした少数例がケミカルピーリング全般に対する不信・不安を引き起こしている傾向があります。大変残念なことですが,治療を受ける側も大げさな報道に惑わされないよう,冷静に判断する必要があります。

 ケミカルピールは,経験豊富な医師の手で正しく行われる限り,多くの人をそれぞれの肌の悩みから解放してくれることに間違いありません。

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